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希望を叶えるフェイスリフト

グリーンスパン議長率いるFRBがわが国の「失われた一O年」(講演が行われた時点では約七年)について詳細な研究を行い、教訓としようとしていたことが十分うかがえる内容だ。 九〇年代のFRBの金融政策は緩和策からの「出口」の決定に苦慮していた。
まず、グリーンスパン議長が先のスピーチで警戒していた通り、金融政策が対象とするべき「インフレ」の範囲に「資産価格」を含めるべきかという、中央銀行を悩ませ続けてきたテ−マを回避し切れなかった。 九〇1九四年と九五年〜九九年を比べると、「ニュ−エコノミー」の下でインフレ率(GDPデフレ−タ)は年平均二・七%から一・六%へと低下基調となる一方、株価(S&P五OO指数)の上昇率は、五・四上昇は政治的にも不人気なのに対し、株価など資産価格の上昇は、よほどの不公平感を醸成しない限り政治的には歓迎されるととから、「民主主義社会」では資産価格を意識した金融引き締めは難しい。
こうした基本的な問題に加え、グローバルな資本移動の活発化の下、米国の金融政策の変更が従来予想されなかった規模で内外の通貨・金融システムの動揺・危機を誘発させ、対応に追われたという面もある。 その経緯を振り返ってみよう。
九-〜九三年のコ雇用なき回復」に対して、FRBは九二年七月1九四年一月まで、政策金利であるフェデラルファンドレ−トの誘導目標を三%(九三年のエネルギー・食品除く消費者物価上昇率三・三%を差し引くとほぼ 実質ゼロ)に維持する「超低金利政策」をとった。 「雇用なき回復」の原因となっていたホワイトカラーを含む大規模なリストラ、金融機関の不良債権処理、冷戦終了による国防費削減という「三つの向かい風(グリーンスパン議長であった。
これらが一巡してきたことを確認したFRBは九四年二月から利上げを開始し、九五年二月までのわずか一年間に計七回行い、政策金利であるフェデラルファントレード目標水準を三%から六%に引き上げた。 金融政策を中立に戻すことを急ぎ過ぎた結果、長期金利が五%台から一気に八%超に上昇、米国自身の景気回復テンポの鈍化に加え、米長短金利の急速な上昇がメキシコからの資本流出を誘発し、九四年一二月のメキシコ通貨危機が発生した。
受け、FRBは九五年七月には利下げに転じた。 その後九七年三月に小幅の利上げを行ったが、アジア通貨危機の発生とその影響を考慮して、引き締め措置が一回だけに留まるうちに、九八年八月、ロシア通貨危機が発生した。
円やドイツ・マルクなど、低金利の先進国通貨を短期で借り入れながら、事実上高金利でドル建て(のはずだった)ロシア国債に巨額の投資を行っていたヘッジファンド、ITCMが破綻に追い込まれた。 エマージング通貨危機は米国の金融システムへ波及した。
この事態に対応するため、FRBは九八年九月、一O月、二月に三カ月連続で〇・二五%ずつの利下げを実施、フェデラルファンドレ−トの水準は四・七五%まで引き下げられた。 九一〜九五年と九六年〜ニOOO年について米国のマネ−サプライ(代表的な指標である除)の伸びを比較すると、年平均二・一%から八・八%に急加速した。

金融政策が直接影響するベースマネ−(準備預金残高と現金流通残高を合計したもの)の伸びは同じく八・四%から五・九%にやや鈍化しており、FRBとして金融的拡大に歯止めをかけようとしたことはうかがえるものの、引き締め切れなかったことがわかる。 株価など資産価格が急上昇する過程では民間の信用創造が活発化し、中央銀行としてマネ−の伸びを完全にコントロールすることはできない。
結果として利上げへの転換が遅れ、二OOO年にかけての株価の過剰な上昇とその後の急落が発生する環境が醸成してしまった。 時結局FRBが本格的な金融引き締めを行ったのは九九年六月以降であり、二〇〇〇9 年五月にかけて計六回行い、フェデラルファンドレ−トを六・五%まで一・七五%引き上げた。
ただ、九九年末からニ〇〇〇年初にかけてコンピュータの誤作動による金融市場の混乱の可能性(いわゆるこ〇〇〇年問題)への予防的措置もあって、金融市場への資金供給を増加させていた。 本格的な引き締め効果はニOOO年に入ってからのようだ。
米株価がピ−クをつけ、急落を始めたのはまさにニOOO年三月であった。 「コーポレートガバナンス」問題の浮上二OO一年一O月に不正会計が発覚したエンロン(米連邦破産法二条の適用申請は一二月二日)と二OO二年六月に粉飾決算が公になったワールドコム(同七月三日)は、九〇年代の超優良企業であった。
二OO一年からO二年にかけて多数表面化したこれら米企業の不正会第2章米国経済は砂上の機関か計事件は、ニ〇〇〇年にかけての株価上昇の一部が、「実態よりも水増しされた利益指標」を反映したものであったことを明らかにし、不正の発覚を契機に株価の調整を引き起こした。 二つの「代表例」については既に多数の論文や書籍が出ている。
エンロンの場合、連結対象外の特別子会社を使用した広い意味での「とばし」により、利益のかさ上げ、実態を上回る時価での資産計上や負債の過小計上、保有証券など資産価格下落の財務への影響の隠蔽を行うとともに、その過程で経営者が私腹を肥やしていたことが明らかになりつつある。 事件発覚後二年半たった現在でも事件は解明中であり、その全貌が明らかになったわけではない。
「先渡し取引」という取引では、まず銀行(この例ではJPモルガン・チェース、銀行名は当時)がマホ−ニアという特別目的子会社に先に代金を支払い、契約の最終日に商品(天然ガス)の引き渡しを受ける契約を結んでいる。 同様の契約をマホ−ニアとエンロンが締結する(エンロンが代金を先に受け取って最終日にマホ−ニアに天然ガスを渡す)。
これだけなら契約の最初に代金が銀行←マホ−ニア←エンロン、最終最終日については銀行が受け取った天然ガスをエンロンに再度売却する。 銀行がエンロンに天然ガスを売却する価格は時価となっているが、別途、この時価と一定の固定支払いを交換する商品スワップ契約を銀行とエンロンが締結しているため、結局様々な取引は互いに相殺され、残るのは最初の銀行から特別目的子会社を経由してエンロンに渡る先払い代金と、最終日に商品スワップに基づいてエンロンから銀行に対して行われる固定価格支払いだけとなる。

実質的にはエンロンが銀行から融資を受け、利子を付けて返済しているにすぎないが、商品取引を介在させることで、この取引残高を貸借対照表の「借入金」からはずし、負債を実態よりも小さく見せ、借入金を営業活動からのキャッシュフローとして計上していた。 こうした操作により、格下げを逃れていたとされる。
上院の試算では、こうした取引で二OOO年末では約四O億ドル、ニOO一年一O月時点では四八億ドル程度の負債が隠されており、これを負債として調整すると、一株当たりの株主資産は四六%減少する。 一方、大手長距離通信会社であったワールドコム(二OO三年四月にMC〜と社名変更し、再建中)のケースは、通信業など初期における投資額や償却額、借入額が大きくなる企業についてはその影響を除いて、営業活動から上がっている利益を見る指標として重用されていたEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)をかさ上げした。

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